トライシクルがどこまでも細い坂道を登って
小さな集落にたどり着いた

さらに急な階段の上に
微笑んでいるような
何かつぶやいているような
ちょっと捉えどころのない印象のその方が
ここフィリピンで紙漉きをされておられる
志村 朝夫(Asao Shimura)さんだった。

しばらく滞在させていただくことに。
歓迎のしるしにと
薬膳風呂を用意してくださるという…
どういうものかさっぱり想像がつかなかったが
テーブルに並べられたのは
シナモン、コリアンダー、しょうが、ウコン、唐辛子、薬草、天秤、計りに木槌…
え?ここから作るんですか?
ひとり分がこれ。
これを叩いて、成分を水に溶けやすくするの。
木槌でゴンゴンと叩くと
ハーブやスパイスから強い香りが立ちだした

鍋に入れ、水を加え

…じゃ、この薪で火を起こして。
薪を割って
ノコギリで切って
少しずつ火種を大きくしていって
煙に涙しながらことこと煮込むこと1時間くらい…?

長い長い時間をかけて、やっと
鍋半分ほどに濃厚な薬膳湯が出来上がった
フィリピンの風呂は沐浴スタイル
通常は水を浴びるだけ
薬膳の湯と水を混ぜながら
時間をかけて出来上がった薬膳湯をありがたく頂戴した
成分を残さず浴びようと
最後の湯を頭からかぶったら
スパイスのツブツブが顔にこびりつき
唐辛子やしょうがの刺激が肌にビリビリときた
ちょっと痛いけどそれもまぁいいや
高地のため朝晩は少し冷えるこの地域
あったまったでしょ、と
志村さんは穏やかにおっしゃった
この方は、噂通り仙人かもしれない…
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