紙すき職人として従事させていただいた越前を発つとき
人間国宝の岩野市兵衛さんから
北海道には大変質の良いノリウツギがあること
けれど年々採る人がいなくなって
ノリウツギの供給が減ってきていること
日本の手すき和紙作りにおいて
ノリウツギはなくてはならないものだから
どうか北海道からの供給を
絶やさないようにしてほしいこと
お聞きしたことばは、今も胸に残っています
独立し札幌で自身の工房を構えた翌年の2013年
札幌近辺の野山でノリウツギを採取
ネリをつくってみたこともあります
何本もの木から採取しても量はほんのわずか…
それでも、いつも使っているトロロアオイとは
また違った粘りで、それはとても感動的でした
北海道のノリウツギ供給になにかお役に立ちたくて
道庁に出向いて相談したりもしましたが
記録が残っておらず、過去の採取者にもつながれず
己の力不足を痛感していました…
北海道立総合研究機構の錦織さんが紙びよりを訪ねてこられたのは数年前…ノリウツギの研究をされると聞き、心が躍りました
数年間の研究と取り組みを発表されるセミナーが
昨日開催され、拝聴してきました
和紙が日本の歴史の中でとても重要な産業であったこと
和紙作りにおけるノリウツギのネリが重要である理由
北海道のノリウツギ採取と和紙産地への供給の歴史
ノリウツギ供給不足により存亡の危機に立たされた吉野和紙のこと
新たなノリウツギの供給地との出会い、採取地との良好な関係づくり、枯渇しない資源のための保全方法など…
いろいろと学ばせていただきました
北海道の和紙職人としてもう少し私もお力添えさせていただきたかったなぁ、関わらせていただきたかったなぁ…との心残りを抱きつつ
研究の末、大変有意義な成果をもたらしてくださった道総研の皆様に感謝いたします。
手すき和紙に欠かせない(※)良質なノリウツギが取れる北海道の資源、和紙産地への供給が今後も無理なく、長年にわたり継続されますよう、微力ながら私も気持ちを寄せていきたいと思っています。
※現在日本の手すき和紙で用いられている粘剤はほとんどがトロロアオイによります。高知県や奈良県など一部の地域で文化財の修繕などに用いる和紙作りにノリウツギが使われています
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